気がついたら
くちなしの花咲く季節になっていた。
樹木のメンテナンスが行き届いた団地の遊歩道に今年も花をつけている。
往年のムード歌謡曲が鼻歌ででる。
『いまでは、指輪も回るほど
痩せてやつれたお前の姿、、、
くちなしの花の花のかおりが旅路のはてまで付いてくる』
なるほど、なるほど
そんなくちなしのかおりはどんなものかと
白く肉厚の花弁に鼻をちかづけてみたところ
想像を裏切る濃厚さであった。
儚さなんて、
これっぽっちもない。
花弁の肉厚さと比例するような
甘く重いかおり。
今さらながら、ムード歌謡の大人っぽさを感じてしまう(あの頃は、幼稚園児だって歌ってたけれど)
しかし
これは嗅いだことのあるかおりと思いながら自宅に帰ると
それは玄関にあった。
本屋の雑貨コーナーで買ったルームフレグランス『ホワイト ムスク』
これを本屋で見つけて即買いしてしまったのは、テスターのかおりが
10代後半、ちょっとヤンキーな先輩の車の匂いだったからに他ならない。(いや、あれよりだいぶ上品)
甘く重い同じ系統のかおりは
ムード歌謡と一緒で郷愁をそそられる。
開けられる引き出しが
時々こうして出現するこの年月が
なんかいいなと思う。
幸せだ。